実家の売却相談を断られた――次に聞くべき「理由」と相談先
結論
断られたら、すぐに「売れない家」と決めず、まず理由を聞きましょう。 理由は大きく、①その会社の事情(収益が合わない・遠い)、②物件の条件(道路・境界・建物の状態)、③手続が済んでいない(相続登記・建物の登記)、に分かれます。どれかで、次に頼む先が変わります(手帖の整理)。 国の2022年度のアンケート(400万円以下の空き家を扱った不動産会社350社)では、6割余りが「業務の負担に対して収益性が低い」ことを扱いにくさに挙げています。(※S10)この記事が合う人
- 実家の売却を不動産会社に相談して、断られた・値段がつかないと言われた人
- 古い・遠い・道が狭いなど、実家が売れるか不安な人
- 断られた理由ごとに、次にどこへ聞けばいいか知りたい人
合わない人(別の記事・窓口へ)
- まだどこにも相談していない人(まず「荷物が残った実家は売れる?」の記事へ)
- 名義が亡くなった親のままの人(先に「相続登記が済んでいない実家は売れる?」の記事へ)
断られた理由の聞き分け表(手帖のおすすめ)
| 言われたこと(例) | 理由の種類 | 次に聞くこと | 確かめる先 |
|---|---|---|---|
| 「金額が小さく、うちでは割に合わない」 | 会社の事情 | 800万円以下の手数料の特例(売主が払う手数料の上限が最大33万円に上がる。媒介契約の前に金額の説明と合意が要る)を使えば扱えるか(※S161・S92) | 別の不動産会社、宅建協会などの空き家相談(※S165) |
| 「遠いので扱えない」 | 会社の事情 | 実家の近くの会社なら扱えそうか | 実家のある地域の不動産会社、自治体の空き家バンク(※S159・S160) |
| 「道路に接していないので建て替えられない」 | 物件の条件 | どの道に、何メートル接しているか。その道は建築基準法の道路か | 市区町村などの建築指導課(※S154) |
| 「境界がはっきりしない」 | 物件の条件 | 境界標・測量図はあるか、どこが分からないのか | 土地家屋調査士会(※S165) |
| 「名義が親のままでは進められない」 | 手続の未了 | 相続登記をいつまでに済ませれば相談を続けられるか | 司法書士会(※S165)(「相続登記が済んでいない実家は売れる?」へ) |
| 「建物が登記されていない」 | 手続の未了 | 建物の表題登記が要るか | 土地家屋調査士(※S163・S164) |
| 「農地なので」「崖や擁壁があるので」 | 物件の条件 | どの決まりや状態が問題か | 実家のある市区町村の空き家相談(どの窓口で確かめればよいかを聞く) |
| 「隣の土地の人の協力が要る」 | 物件の条件 | 境界の確認か、通路か、何の協力が要るか | 土地家屋調査士会(境界)(※S165) |
| 「荷物が多くて見られない」 | 状態 | 荷物があるままで査定や売却ができるか | 「荷物が残った実家は売れる?」へ |
国のアンケートの自由回答でも、相続・残置物・建物の状態・農地や崖地・隣接地の所有者・境界の確認が、空き家を扱う苦労として挙がっています。(※S10) 聞くときは、言われた言葉をそのまま下の「相談結果メモ」に書き、次の会社に見せると話が早くなります。
なぜ断られる? 不動産会社が安い空き家を扱いにくい理由(国のアンケート)
国土交通省の資料(2024年6月)に載っている2022年度のアンケートでは、売買価格400万円以下の空き家の媒介の依頼・成約がある不動産会社350社が、空き家を扱うときのネックを答えています(複数回答)。(※S10)
| 扱いにくさ | 割合 |
|---|---|
| 業務の負担に対して収益性が低い | 61.7% |
| 建物の劣化や不具合など、物件を扱うリスクが重い | 34.6% |
| 通常の仲介より現地調査などの手間・時間がかかる | 32.0% |
| 物件が遠方にあることが多く、業務の負担が増す | 17.7% |
| 成約までに時間がかかる | 11.7% |
| 権利関係が複雑で調査が大変 | 10.6% |
(※S10)
断られた理由が「収益」や「遠方」なら、物件ではなくその会社の事情かもしれません。そういう事情で、別の会社なら引き受けることがあるかは、聞いてみないと分かりません(手帖の考え)。
- 2024年7月から、800万円以下の宅地・建物の売買の仲介では、会社が受け取れる手数料の上限が引き上げられる特例ができました(上限は33万円・税込)。国交省は、空き家を扱うのにビジネス上の課題があることを見直しの理由に挙げています。上限を超えて受け取るには、媒介契約の前に、会社が金額を説明して売主と合意しておくことが必要です。(※S161・S92)
- この特例は手数料が安くなる決まりではありません。手数料の比べ方は「仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?」にまとめています。
「建て替えられない(再建築不可)」と言われたとき
- 建築基準法では、建物の敷地は、原則として幅4メートル以上の「道路」に2メートル以上接していなければなりません。(※S150)
- ただし、幅4メートル未満の道でも、昔から建物が立ち並んでいた道で特定行政庁が指定したもの(いわゆる2項道路)は道路とみなされます。この場合、原則として道の中心線から2メートルまでの部分は道路とみなされ、そこには建てられません(いわゆるセットバック)。(※S150・S152)
- 道路に2メートル以上接していなくても、特定行政庁の認定か、建築審査会の同意を得た許可を受ければ、建てられる場合があります。(※S150・S152)
- 「再建築不可」は法律の言葉ではありません。国交省のガイドラインは、狭い道で起きる支障の例として、道路に接していない敷地では再建築ができないため売却もできず、有効活用が進まないことを挙げています。(※S150・S153)
実家の前の道が建築基準法の道路かどうかは、市区町村などの建築指導課で確かめます。横浜市や福岡市は、取り違えの影響が大きいため電話では答えず、地図や登記の写しなどの資料を添えて相談する形をとっています(横浜市は指定道路図を地図サービスで公開しています)。(※S154)この記事では、個別の家が建て替えられるかは判定しません。
道路の決まりと売るときの説明
- 条文では、接道の決まりは第43条第1項、道路の定義は第42条、認定は第43条第2項第1号(2018年の改正でできた制度)、許可は同第2号(以前の「ただし書」の許可に当たる)です。2023年度の実績は、認定1,232件、許可6,579件です。(※S150・S152・S155)
- 不動産会社は、買主に契約前に説明する重要事項の中で、建築基準法第43条の制限を説明する決まりです(宅地建物取引業法 第35条・施行令 第3条)。(※S167)
- 建築基準法の道路の決まり(第3章)は、都市計画区域と準都市計画区域の中で適用されます(第41条の2)。(※S151)
- 建て替えずに直して売る・使う場合も、2階建ての木造戸建てなどの大規模なリフォームは、2025年4月以降に工事を始めるものから、事前に建築確認が必要になりました。(※S156)
物件の条件で、すぐには直せないとき
道路や崖などの条件がすぐには直せないと分かっても、すぐに諦める前に確かめられることがあります(手帖のおすすめ。売れるかどうかの判定ではありません)。
- 建て替えの例外:認定や許可の相談ができるか、その窓口はどこかを、建築指導課などに聞く。(※S150・S154)
- 自治体の空き家相談:市町村は、空き家の適切な管理を進めるため、持ち主に情報の提供や助言などの援助をするよう努めると空家法に決まっていて、空き家の相談を受ける法人を指定している市町村もあります(2025年3月末時点で64市町村・95法人)。(※S157・S158)
- 隣の土地の持ち主:土地を使いたい人がいないか、声をかけてみる。
- 買取の会社:下の「買取の会社に相談するとき」の注意を読んでから。
空き家バンクに出すとき
- 全国版の空き家バンクは、自治体ごとの空き家バンクの情報を、まとめて検索できるようにしたサイトです。2026年9月末時点で1,153自治体が参加し、自治体へのアンケートなどで約28,000件が成約しています。全国版に載るのは参加自治体の物件だけで、所有者の同意が要ります。(※S159)
- 登録の窓口は、実家のある自治体の空き家バンクです。条件は自治体ごとに違い、たとえば宮城県石巻市は、登記されていない・相続が済んでいない・道路に接していない土地の空き家などを、登録できない例に挙げています。(※S160)
- 栃木県鹿沼市は、市は売買の交渉や契約に関与せず、希望すれば、市と協定を結んだ宅建協会などを通じて市内の不動産会社を紹介してもらえる、と案内しています(付き合いのある会社に頼む形などもある)。長野県茅野市も、市役所は売買に関与せず、市が登録した協力事業者(市内の不動産会社)の物件調査と仲介契約を経て登録する形です。(※S160)
空き家バンクに出せるかどうかも、自治体の窓口で物件の条件を伝えて確かめましょう(手帖のおすすめ)。
買取の会社に相談するとき
断られた家を、不動産会社が自分で買い取る「買取」を扱う会社もあります。ただし、買取は会社が自分で買主になる取引で、たとえばクーリング・オフの扱いが仲介とは違います。(※S105)
- 国交省は、高齢者が不動産会社に自宅を売る取引で、強引な勧誘・相場より安い価格・高額な解約料などのトラブルがあると注意を呼びかけ、不動産会社が買主になる売却はクーリング・オフの対象外だとしています。(※S105・S104)
- 免許は国交省の「宅建業者企業情報」で調べられます。(※S105)
仲介と買取の違いと比べ方は、「仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?」で詳しく整理しています。
相談結果メモ(手帖のおすすめ)
印刷して、相談するたびに1行ずつ書き足します。
| 日付 | 相談した先 | 言われたこと(そのまま) | 理由の種類(会社の事情/物件の条件/手続の未了) | 次に聞くこと |
|---|---|---|---|---|
架空の例(手帖の計算例)
書き方の例です(会社・日付・言葉はすべて架空です)。
| 日付 | 相談した先 | 言われたこと(そのまま) | 理由の種類 | 次に聞くこと |
|---|---|---|---|---|
| 11月2日 | 実家の近くのA不動産 | 「この金額だと、うちでは割に合わない」 | 会社の事情 | 手数料の特例を使えば扱えるか、ほかの会社を紹介できるか |
| 11月9日 | B不動産 | 「前の道が建築基準法の道路か分からない」 | 物件の条件 | 市の建築指導課で道路の種類を確かめる |
断った不動産会社に聞くこと
- 扱えない理由は、御社の営業の範囲や採算の事情ですか、それとも物件の条件ですか
- 物件の条件なら、どの点ですか(道路・境界・建物の状態・登記など)
- その点が解決したら、もう一度相談できますか
- 800万円以下の手数料の特例(売主が払う上限が最大33万円に上がる。媒介契約の前に金額を説明・合意)を使えば、扱っていただけますか
印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。
建築指導課などに聞くこと
- この土地の前の道は、建築基準法の道路ですか。種類は何ですか
- 道路に接していない場合、第43条第2項の認定や許可の対象になる可能性はありますか。相談の窓口と、持っていく資料も教えてください
印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。
次に確かめる先
制度・手続きを確かめる(公的な窓口)
- 市区町村などの建築指導課:前の道が建築基準法の道路か、建て替えの条件(※S154)
- 実家のある自治体の空き家相談・空き家バンク:登録の条件、地元の不動産会社などの案内(※S160)
- 宅建協会・土地家屋調査士会・司法書士会:自治体の一覧で、売却・境界や未登記の建物・相続登記の相談先として案内されている団体(※S165)
- 消費者ホットライン「188」:買取の勧誘や契約で困ったとき(※S104)
出典と確認日
- ※S10 国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラム 参考資料集」(2024年6月)11頁・65〜67頁 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750045.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S92 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(2026年4月1日施行版)告示第七関係 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001881261.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S104 国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」(2021年6月24日) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210624_1.html (確認 2026-10-25)
- ※S105 国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルにご注意ください!」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk3_0053.html (確認 2026-10-25)
- ※S150 e-Gov 法令検索 建築基準法 第42条・第43条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201 (確認 2026-10-25)
- ※S151 e-Gov 法令検索 建築基準法 第3条・第6条・第41条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201 (確認 2026-10-25)
- ※S152 国土交通省 住宅局「接道規制のあり方について」(2025年4月25日の検討会資料) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001894185.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S153 国土交通省 住宅局「狭あい道路対策に関するガイドライン」(2024年3月) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001735119.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S154 横浜市「建築基準法の道路について」(2025年7月15日更新)・福岡市「建築基準法上の道路について」(2025年5月29日更新) https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/tetsuduki/doro/doro.html / https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/kenchikushido/life/kijunnhoujounodouro/kenchikukijunnhoujounodouronitsuite.html (確認 2026-10-25)
- ※S155 千葉市「法43条2項2号(旧法43条1項ただし書)許可、法43条2項1号認定について」(2024年7月12日更新)・東京都都市整備局「第43条第2項に基づく認定・許可の取扱い」 https://www.city.chiba.jp/toshi/kenchiku/johosoudan/43joutadashigaki.html / https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku_kaihatsu/kenchiku_gyosei/gyosei/kijun/43 (確認 2026-10-25)
- ※S156 国土交通省 住宅局「大規模なリフォーム 建築確認手続きの対象となります」(2025年3月版) https://www.mlit.go.jp/common/001765901.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S159 国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」・「『全国版空き家・空き地バンク』について」(2026年9月末時点) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html / https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/002026497.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S160 石巻市・鹿沼市・茅野市の空き家バンクの案内 https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10503600/10503500/ishinomakiakiyabank/akiyabank-guide-owner.pdf / https://www.city.kanuma.tochigi.jp/manage/contents/upload/63be600786907.pdf / https://www.city.chino.lg.jp/uploaded/attachment/36062.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S157 e-Gov 法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法 第12条・第23条・第24条 https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127 (確認 2026-10-25)
- ※S158 国土交通省 報道発表「令和5年改正空家法に基づく取組が広がる」(2025年12月25日・2025年3月31日時点の調査) https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000257.html (確認 2026-10-25)
- ※S161 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(2024年6月) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S163 e-Gov 法令検索 不動産登記法 第47条・第123条・第131条/法務省「筆界特定制度」 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 / https://www.moj.go.jp/MINJI/minji104.html (確認 2026-10-25)
- ※S164 法務局「登記申請を御自身ですることを検討されている方からよくある質問」・京都地方法務局「相続に関する登記の手続について」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00057.html / https://houmukyoku.moj.go.jp/kyoto/page000001_00519.html (確認 2026-10-25)
- ※S165 広島市「空き家に関する専門家団体などの相談窓口」(2026年7月21日更新)・福島県「空き家の相談窓口」(2024年12月1日更新) https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/sumai/1003056/1003359.html / https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41065b/akiyasoudan.html (確認 2026-10-25)
- ※S167 e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法 第35条・同施行令 第3条 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176 / https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000383 (確認 2026-10-25)