荷物が残った実家は売れる? 相談・査定・内覧・契約・引き渡しに分けて確かめる

更新:2026年10月25日

結論

荷物が残っていても、売る話は進められます。荷物を残すか撤去するか、いつまでに撤去するかは、売買契約で決めることです。(※S01・S02) 東京都の既存住宅の売買ガイドブックが示す手順にも、査定の前に片付けを済ませる段階はありません(※S08)。荷物があるうちに相談を始め、査定を荷物がある状態で受けられるか、仲介で売り出すなら内覧の前にどこまで片付けるかを、不動産会社と決めましょう。

相続放棄を少しでも考えているなら、片付けや売却の前に止まってください(理由は下の「相談」の節)。

この記事が合う人

  • 実家に家財が残っていて、片付けが終わるまで不動産会社に連絡できないと思っている人
  • 遠方に住んでいて、何から手をつけるか決めかねている人
  • 仲介で売るか、買取にするか、まだ決めていない人

合わない人(別の記事・窓口へ)

  • 名義が亡くなった祖父母のまま、または相続人が決まっていない人(先に名義と相続人の確認が必要です)
  • 相続放棄を考えている人(片付けの前に、家庭裁判所や専門家に確かめてください)
  • 共有名義の兄弟姉妹で意見が分かれている人

段階ごとに、荷物の扱いは違います

段階荷物の状態確かめること
相談そのままで相談できます名義・相続人・相続放棄の予定がないか/家財の量(写真で伝える)/遠方かどうか
査定荷物がある状態で受けられるかは、予約のときに聞く査定額の根拠/近所の成約価格/撤去の費用を査定額に入れたか
売り出し・内覧(仲介の場合)買う人が家の中を見に来ることがある。どこまで片付けるかを不動産会社と決める内覧の前に片付ける範囲/立ち会えないときの鍵と案内の方法
売買契約残すか撤去するかを、契約書に書く残す物の一覧・撤去の期限・費用の負担・知っている不具合の伝え方
引き渡し契約で決めた状態にする撤去が終わったか/残す物が一覧どおりか/片付け業者の許可と見積書

相談:荷物はそのままで相談できます

  • 東京都の空き家の相談窓口は、相談の例に「家財整理ができず前に進めない」「相続した実家を売るまでの手順がわからない」を挙げ、無料で受け付けています。(※S11)
  • 国土交通省が2022年度に行ったアンケート(2024年6月の資料に掲載・空き家を扱う不動産会社428社が回答)では、57%が、売主から頼まれて「残置物処理やリフォーム、解体の相談や事業者の紹介」に対応していました(残置物は、家に残された家財などのこと)。(※S10)

相談のときに、部屋ごとの写真と「何が、どのくらい残っているか」のメモを用意しておくと、遠方からでも家の様子を伝えられます。

相続放棄を考えている場合 民法では、相続人が相続財産の全部または一部を処分すると、相続を承認したものとみなされます(保存のための行為などは除く・民法第921条)。(※S03) 相続放棄を少しでも考えているなら、家財の片付けや売却・買取の前に、家庭裁判所や専門家に確かめてください。相続放棄の申述は、原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です(期間を延ばす申立てもあります)。(※S05)

査定:荷物がある状態で受けられるか、予約のときに聞く

東京都の既存住宅の売買ガイドブックでは、売主の手順は「事前の確認 → 不動産会社に査定してもらい売出価格を検討 → 媒介契約」の順で、査定の前に片付けを済ませる段階は書かれていません。(※S08) 実際に荷物がある状態で室内まで見てもらえるか、撤去の費用を査定額に入れるか(引くか)は、予約のときに不動産会社に聞きましょう。

査定額は不動産会社の見立てで、最終的な値段は買主との合意で決まります。不動産会社は、媒介契約で売り出す価格について意見を言うときは、根拠を示す決まりがあります(宅地建物取引業法 第34条の2第2項)(※S06)。査定額・売出価格・成約価格・買取の提示額の違いは、「仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?」で詳しく並べています。

査定額を成約価格と見比べる(手帖のおすすめの手順)

  1. 査定を受けたら、査定額と「根拠」(どの取引事例と比べたか)を書面かメモでもらう
  2. 不動産情報ライブラリで、実家の近く・近い広さと築年数の成約価格を探す
  3. 査定額が成約価格から大きく離れていたら、その理由を聞く(荷物の撤去費を引いたか、建物の状態をどう見たか)
  4. 2社以上に査定を頼むときは、同じ質問をして、答えを並べて比べる

売り出し・内覧:仲介で売るなら、どこまで片付けるかを決める

仲介で売る場合は、媒介契約のあと、不動産会社が買う人を探し、買う人との交渉を経て売買契約に進みます。(※S08) この間に、買う人が家の中を見に来ることがあります(内覧)。荷物が残った部屋をそのまま見せるか、内覧の前にどこまで片付けるかは、不動産会社と相談して決めましょう。遠方で立ち会えないときは、鍵の預け方と案内の方法も決めておきます。

売買契約:荷物を残すか撤去するかは、ここで決めます

引き渡した家が「契約の内容」に合っていないと、売主は買主から修理などの対応・代金の減額・契約の解除・損害賠償を求められることがあります(契約不適合責任・民法第562条ほか)。(※S01・S02) 基準になるのは契約の内容です。仲介で個人に売る場合も、不動産会社に買い取ってもらう場合も、どの状態で引き渡すか(荷物を残すか撤去するか)を契約書に書いておくと、引き渡しのあとで「話が違う」になりにくくなります。

契約で決めておくこと

  1. 何を残し、何を撤去するか(一覧にする)
  2. 撤去は誰が、いつまでにするか(引き渡し日までか、そのあとか)
  3. 撤去の費用は誰が負担するか(価格に含めるか、別に払うか)
  4. 残した物の扱い(買主が処分してよいか)
  5. 知っている不具合は、書面で伝える
  6. 片付けを不動産会社に頼むなら、仲介とは別の契約書で金額と範囲を決める
5と6の根拠(詳しく)
  • 5:責任を負わないという特約を結んでも、売主が知っていて告げなかったことは責任を免れません(民法第572条)。買主が種類・品質の不具合を理由に請求するには、知ってから1年以内に売主に知らせる必要があります(売主が引き渡しのときに不具合を知っていた、または重い過失で知らなかった場合は、この期限は当てはまりません・民法第566条)。(※S02)
  • 6:国土交通省の資料は、仲介とは別に書面などで契約して受け取る報酬は、仲介手数料の上限の決まりとは別の扱いになると示し、家財の片付けをその業務の例に挙げています。(※S10)

残す物の一覧(契約書に付ける別紙のひな形)

部屋・場所残す物撤去する物撤去する人・期限費用の負担
例:台所例:備え付けの食器棚例:冷蔵庫・食器例:売主・引き渡し日まで例:売主

売主が家の状態を書く「物件状況等報告書」や、引き渡す設備を書く「設備表」(※S08)と、この一覧が食い違わないように作るのが、手帖のおすすめです。

片付けてから売るか、荷物ごと買い取ってもらうか(並べ方の例)

架空の例(手帖の計算例)

数字はすべて架空です(相場ではありません)。仲介手数料も架空の値で、実際の手数料には法令で決まった上限があります(宅地建物取引業法 第46条)(※S27)。税金・登記の費用・ローンの残りは入れていません。

項目A 片付けてから仲介で売るB 荷物ごと買い取ってもらう
売れる価格1,500万円1,200万円
仲介手数料−55万円0円
片付けの費用−40万円0円(買取価格に含めた形)
帰省の交通費−9万円(3回)−3万円(1回)
売れるまでの維持費−12万円(6か月)−2万円(1か月)
差し引き1,384万円1,195万円

仲介と買取の比べ方そのもの(値段の幅・手数料の決まり・維持費)は、「仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?」で詳しく並べています。この例ではAが189万円多く残りますが、Aは売れるまでの期間と手間がかかり、売れる価格も確定ではありません。実際に比べるときは、仲介の「査定額」と買取の「提示額」は性質が違う(査定額は見立て、提示額はその会社が買う値段)ことに気をつけ、見積書の金額で同じ項目を並べてください。

引き渡し:片付けを頼むなら、許可と書面を確かめます

家財の片付け・不用品回収・遺品整理について、国民生活センターは、全国の消費生活センター等に寄せられた次のような相談の例を紹介しています。(※S14・S15・S16)

  • 聞いていた金額より大幅に高い金額を、作業のあとで請求された
  • 残すと約束したアルバムなどまで処分され、戻ってこなかった
  • 急かされて契約してしまった
  • 高いキャンセル料を求められた

国民生活センターは、複数の見積もりを取ること、作業日・内容・料金・支払い方法・解約料を契約前に確かめること、作業に立ち会うことを勧めています。(※S15) 家庭から出る不用品を運ぶには、市町村の委託か一般廃棄物処理業の許可が必要で、買い取るなら古物商の許可が必要です。(※S15・S16)

出張買取は「あとで取り消せる」と思い込まない 住まいを引き払うときに自分から業者を呼んだ取引は、クーリング・オフが使えないことがあります。また、冷蔵庫・洗濯機などの大きな家電、たんす・ソファーなどの家具、本など、実家に残りがちな物の多くは、訪問購入の決まりの対象外です。(※S19・S26) 売るつもりのない物は見せない・出さないようにし、品目と価格を書面で確かめてください。迷ったら、契約の前に消費者ホットライン「188」に相談してください。(※S18)

訪問購入の決まりの詳しい範囲
  • 訪問購入は、条件を満たせば、書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフができます。ただし消費者庁の案内では、「住居からの退去に際し、売買契約の相手方から取引を誘引した場合」は一部適用除外とされ、当てはまるのは事業者の氏名などの明示と、勧誘を受ける意思の確認・再勧誘の禁止の決まりだけです(クーリング・オフは当てはまりません)。(※S19)
  • 政令で決められた品物(自動車〈二輪を除く〉、持ち運びが容易な物を除く家庭用の電気製品〈冷蔵庫・洗濯機・テレビ・エアコンなど〉、家具〈たんす・机・ソファー・ベッドなど〉、書籍〈事典・全集・単行本など〉、有価証券、CD・DVD など)は、訪問購入の決まりの対象外です。(※S26)
  • 実家の片付けで業者を呼ぶ場合がこれに当たるかどうかは、状況によります。

自治体の補助がある場合も 東京都が2025年8月に掲載した空き家相談窓口のチラシでは、都内の空き家について、窓口に相談したうえで所定の事業者と契約した家財整理の費用(税抜)の2分の1、上限5万円を補助するとしていました(解体の補助とはどちらか一方だけ)。今年度も実施しているかは、窓口で確かめてください。(※S11) ほかの自治体にも、空き家の相談窓口や補助があることがあります。「(実家のある市区町村名) 空き家 相談窓口」で検索するか、市区町村の住宅や空き家の担当課に問い合わせてみてください。

不動産会社に聞くこと

不動産会社に聞くこと

  • 荷物が残った状態で、相談と訪問査定を受けてもらえますか
  • この査定額の根拠を教えてください(近い成約事例はありますか)
  • 荷物を撤去する費用は、査定額に入っていますか
  • 仲介の場合と買取の場合で、引き渡しのときの荷物の扱いと価格はどう変わりますか
  • 荷物を残して売る場合、契約書にどう書きますか(一覧・期限・費用)
  • 片付けをお願いする場合、仲介とは別の契約と見積もりになりますか
  • 引き渡したあとの責任は、どの範囲・どの期間で負う形になりますか

印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。

片付け業者・買取業者に聞くこと

片付け業者・買取業者に聞くこと

  • 一般廃棄物処理業の許可(または市町村の委託)はありますか。買い取る場合、古物商の許可はありますか
  • 見積書を書面でもらえますか(追加料金がかかる条件・キャンセル料も)
  • 残す物の一覧どおりに作業してもらえますか(立ち会えますか)

印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。

次に確かめる先

制度・手続きを確かめる(公的な窓口)

  • 実家のある市区町村の空き家相談窓口:家財整理や売却の手順の相談。東京都の例は「東京都空き家ワンストップ相談窓口」(※S11)
  • 不動産情報ライブラリ(国土交通省):近所の成約価格を調べる(※S09)
  • 家庭裁判所:相続放棄の申述(※S05)
  • 消費者ホットライン「188」:片付け・買取でトラブルになったとき、契約の前に迷ったとき(※S15)

出典と確認日