荷物が残った実家は売れる? 相談・査定・内覧・契約・引き渡しに分けて確かめる
結論
荷物が残っていても、売る話は進められます。荷物を残すか撤去するか、いつまでに撤去するかは、売買契約で決めることです。(※S01・S02) 東京都の既存住宅の売買ガイドブックが示す手順にも、査定の前に片付けを済ませる段階はありません(※S08)。荷物があるうちに相談を始め、査定を荷物がある状態で受けられるか、仲介で売り出すなら内覧の前にどこまで片付けるかを、不動産会社と決めましょう。相続放棄を少しでも考えているなら、片付けや売却の前に止まってください(理由は下の「相談」の節)。
この記事が合う人
- 実家に家財が残っていて、片付けが終わるまで不動産会社に連絡できないと思っている人
- 遠方に住んでいて、何から手をつけるか決めかねている人
- 仲介で売るか、買取にするか、まだ決めていない人
合わない人(別の記事・窓口へ)
- 名義が亡くなった祖父母のまま、または相続人が決まっていない人(先に名義と相続人の確認が必要です)
- 相続放棄を考えている人(片付けの前に、家庭裁判所や専門家に確かめてください)
- 共有名義の兄弟姉妹で意見が分かれている人
段階ごとに、荷物の扱いは違います
| 段階 | 荷物の状態 | 確かめること |
|---|---|---|
| 相談 | そのままで相談できます | 名義・相続人・相続放棄の予定がないか/家財の量(写真で伝える)/遠方かどうか |
| 査定 | 荷物がある状態で受けられるかは、予約のときに聞く | 査定額の根拠/近所の成約価格/撤去の費用を査定額に入れたか |
| 売り出し・内覧(仲介の場合) | 買う人が家の中を見に来ることがある。どこまで片付けるかを不動産会社と決める | 内覧の前に片付ける範囲/立ち会えないときの鍵と案内の方法 |
| 売買契約 | 残すか撤去するかを、契約書に書く | 残す物の一覧・撤去の期限・費用の負担・知っている不具合の伝え方 |
| 引き渡し | 契約で決めた状態にする | 撤去が終わったか/残す物が一覧どおりか/片付け業者の許可と見積書 |
相談:荷物はそのままで相談できます
- 東京都の空き家の相談窓口は、相談の例に「家財整理ができず前に進めない」「相続した実家を売るまでの手順がわからない」を挙げ、無料で受け付けています。(※S11)
- 国土交通省が2022年度に行ったアンケート(2024年6月の資料に掲載・空き家を扱う不動産会社428社が回答)では、57%が、売主から頼まれて「残置物処理やリフォーム、解体の相談や事業者の紹介」に対応していました(残置物は、家に残された家財などのこと)。(※S10)
相談のときに、部屋ごとの写真と「何が、どのくらい残っているか」のメモを用意しておくと、遠方からでも家の様子を伝えられます。
相続放棄を考えている場合 民法では、相続人が相続財産の全部または一部を処分すると、相続を承認したものとみなされます(保存のための行為などは除く・民法第921条)。(※S03) 相続放棄を少しでも考えているなら、家財の片付けや売却・買取の前に、家庭裁判所や専門家に確かめてください。相続放棄の申述は、原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です(期間を延ばす申立てもあります)。(※S05)
査定:荷物がある状態で受けられるか、予約のときに聞く
東京都の既存住宅の売買ガイドブックでは、売主の手順は「事前の確認 → 不動産会社に査定してもらい売出価格を検討 → 媒介契約」の順で、査定の前に片付けを済ませる段階は書かれていません。(※S08) 実際に荷物がある状態で室内まで見てもらえるか、撤去の費用を査定額に入れるか(引くか)は、予約のときに不動産会社に聞きましょう。
査定額は不動産会社の見立てで、最終的な値段は買主との合意で決まります。不動産会社は、媒介契約で売り出す価格について意見を言うときは、根拠を示す決まりがあります(宅地建物取引業法 第34条の2第2項)(※S06)。査定額・売出価格・成約価格・買取の提示額の違いは、「仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?」で詳しく並べています。
査定額を成約価格と見比べる(手帖のおすすめの手順)
- 査定を受けたら、査定額と「根拠」(どの取引事例と比べたか)を書面かメモでもらう
- 不動産情報ライブラリで、実家の近く・近い広さと築年数の成約価格を探す
- 査定額が成約価格から大きく離れていたら、その理由を聞く(荷物の撤去費を引いたか、建物の状態をどう見たか)
- 2社以上に査定を頼むときは、同じ質問をして、答えを並べて比べる
売り出し・内覧:仲介で売るなら、どこまで片付けるかを決める
仲介で売る場合は、媒介契約のあと、不動産会社が買う人を探し、買う人との交渉を経て売買契約に進みます。(※S08) この間に、買う人が家の中を見に来ることがあります(内覧)。荷物が残った部屋をそのまま見せるか、内覧の前にどこまで片付けるかは、不動産会社と相談して決めましょう。遠方で立ち会えないときは、鍵の預け方と案内の方法も決めておきます。
売買契約:荷物を残すか撤去するかは、ここで決めます
引き渡した家が「契約の内容」に合っていないと、売主は買主から修理などの対応・代金の減額・契約の解除・損害賠償を求められることがあります(契約不適合責任・民法第562条ほか)。(※S01・S02) 基準になるのは契約の内容です。仲介で個人に売る場合も、不動産会社に買い取ってもらう場合も、どの状態で引き渡すか(荷物を残すか撤去するか)を契約書に書いておくと、引き渡しのあとで「話が違う」になりにくくなります。
契約で決めておくこと
- 何を残し、何を撤去するか(一覧にする)
- 撤去は誰が、いつまでにするか(引き渡し日までか、そのあとか)
- 撤去の費用は誰が負担するか(価格に含めるか、別に払うか)
- 残した物の扱い(買主が処分してよいか)
- 知っている不具合は、書面で伝える
- 片付けを不動産会社に頼むなら、仲介とは別の契約書で金額と範囲を決める
5と6の根拠(詳しく)
- 5:責任を負わないという特約を結んでも、売主が知っていて告げなかったことは責任を免れません(民法第572条)。買主が種類・品質の不具合を理由に請求するには、知ってから1年以内に売主に知らせる必要があります(売主が引き渡しのときに不具合を知っていた、または重い過失で知らなかった場合は、この期限は当てはまりません・民法第566条)。(※S02)
- 6:国土交通省の資料は、仲介とは別に書面などで契約して受け取る報酬は、仲介手数料の上限の決まりとは別の扱いになると示し、家財の片付けをその業務の例に挙げています。(※S10)
残す物の一覧(契約書に付ける別紙のひな形)
| 部屋・場所 | 残す物 | 撤去する物 | 撤去する人・期限 | 費用の負担 |
|---|---|---|---|---|
| 例:台所 | 例:備え付けの食器棚 | 例:冷蔵庫・食器 | 例:売主・引き渡し日まで | 例:売主 |
売主が家の状態を書く「物件状況等報告書」や、引き渡す設備を書く「設備表」(※S08)と、この一覧が食い違わないように作るのが、手帖のおすすめです。
片付けてから売るか、荷物ごと買い取ってもらうか(並べ方の例)
架空の例(手帖の計算例)
数字はすべて架空です(相場ではありません)。仲介手数料も架空の値で、実際の手数料には法令で決まった上限があります(宅地建物取引業法 第46条)(※S27)。税金・登記の費用・ローンの残りは入れていません。
| 項目 | A 片付けてから仲介で売る | B 荷物ごと買い取ってもらう |
|---|---|---|
| 売れる価格 | 1,500万円 | 1,200万円 |
| 仲介手数料 | −55万円 | 0円 |
| 片付けの費用 | −40万円 | 0円(買取価格に含めた形) |
| 帰省の交通費 | −9万円(3回) | −3万円(1回) |
| 売れるまでの維持費 | −12万円(6か月) | −2万円(1か月) |
| 差し引き | 1,384万円 | 1,195万円 |
仲介と買取の比べ方そのもの(値段の幅・手数料の決まり・維持費)は、「仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?」で詳しく並べています。この例ではAが189万円多く残りますが、Aは売れるまでの期間と手間がかかり、売れる価格も確定ではありません。実際に比べるときは、仲介の「査定額」と買取の「提示額」は性質が違う(査定額は見立て、提示額はその会社が買う値段)ことに気をつけ、見積書の金額で同じ項目を並べてください。
引き渡し:片付けを頼むなら、許可と書面を確かめます
家財の片付け・不用品回収・遺品整理について、国民生活センターは、全国の消費生活センター等に寄せられた次のような相談の例を紹介しています。(※S14・S15・S16)
- 聞いていた金額より大幅に高い金額を、作業のあとで請求された
- 残すと約束したアルバムなどまで処分され、戻ってこなかった
- 急かされて契約してしまった
- 高いキャンセル料を求められた
国民生活センターは、複数の見積もりを取ること、作業日・内容・料金・支払い方法・解約料を契約前に確かめること、作業に立ち会うことを勧めています。(※S15) 家庭から出る不用品を運ぶには、市町村の委託か一般廃棄物処理業の許可が必要で、買い取るなら古物商の許可が必要です。(※S15・S16)
出張買取は「あとで取り消せる」と思い込まない 住まいを引き払うときに自分から業者を呼んだ取引は、クーリング・オフが使えないことがあります。また、冷蔵庫・洗濯機などの大きな家電、たんす・ソファーなどの家具、本など、実家に残りがちな物の多くは、訪問購入の決まりの対象外です。(※S19・S26) 売るつもりのない物は見せない・出さないようにし、品目と価格を書面で確かめてください。迷ったら、契約の前に消費者ホットライン「188」に相談してください。(※S18)
訪問購入の決まりの詳しい範囲
- 訪問購入は、条件を満たせば、書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフができます。ただし消費者庁の案内では、「住居からの退去に際し、売買契約の相手方から取引を誘引した場合」は一部適用除外とされ、当てはまるのは事業者の氏名などの明示と、勧誘を受ける意思の確認・再勧誘の禁止の決まりだけです(クーリング・オフは当てはまりません)。(※S19)
- 政令で決められた品物(自動車〈二輪を除く〉、持ち運びが容易な物を除く家庭用の電気製品〈冷蔵庫・洗濯機・テレビ・エアコンなど〉、家具〈たんす・机・ソファー・ベッドなど〉、書籍〈事典・全集・単行本など〉、有価証券、CD・DVD など)は、訪問購入の決まりの対象外です。(※S26)
- 実家の片付けで業者を呼ぶ場合がこれに当たるかどうかは、状況によります。
自治体の補助がある場合も 東京都が2025年8月に掲載した空き家相談窓口のチラシでは、都内の空き家について、窓口に相談したうえで所定の事業者と契約した家財整理の費用(税抜)の2分の1、上限5万円を補助するとしていました(解体の補助とはどちらか一方だけ)。今年度も実施しているかは、窓口で確かめてください。(※S11) ほかの自治体にも、空き家の相談窓口や補助があることがあります。「(実家のある市区町村名) 空き家 相談窓口」で検索するか、市区町村の住宅や空き家の担当課に問い合わせてみてください。
不動産会社に聞くこと
不動産会社に聞くこと
- 荷物が残った状態で、相談と訪問査定を受けてもらえますか
- この査定額の根拠を教えてください(近い成約事例はありますか)
- 荷物を撤去する費用は、査定額に入っていますか
- 仲介の場合と買取の場合で、引き渡しのときの荷物の扱いと価格はどう変わりますか
- 荷物を残して売る場合、契約書にどう書きますか(一覧・期限・費用)
- 片付けをお願いする場合、仲介とは別の契約と見積もりになりますか
- 引き渡したあとの責任は、どの範囲・どの期間で負う形になりますか
印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。
片付け業者・買取業者に聞くこと
片付け業者・買取業者に聞くこと
- 一般廃棄物処理業の許可(または市町村の委託)はありますか。買い取る場合、古物商の許可はありますか
- 見積書を書面でもらえますか(追加料金がかかる条件・キャンセル料も)
- 残す物の一覧どおりに作業してもらえますか(立ち会えますか)
印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。
次に確かめる先
制度・手続きを確かめる(公的な窓口)
- 実家のある市区町村の空き家相談窓口:家財整理や売却の手順の相談。東京都の例は「東京都空き家ワンストップ相談窓口」(※S11)
- 不動産情報ライブラリ(国土交通省):近所の成約価格を調べる(※S09)
- 家庭裁判所:相続放棄の申述(※S05)
- 消費者ホットライン「188」:片付け・買取でトラブルになったとき、契約の前に迷ったとき(※S15)
出典と確認日
- ※S01 法務省「2020年4月1日から 売買、消費貸借、定型約款などの契約に関する民法のルールが変わります」 https://www.moj.go.jp/content/001289629.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S02 e-Gov 法令検索 民法 第562条・第566条・第572条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (確認 2026-10-25)
- ※S03 e-Gov 法令検索 民法 第921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (確認 2026-10-25)
- ※S05 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html (確認 2026-10-25)
- ※S06 e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法 第34条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176 (確認 2026-10-25)
- ※S08 東京都住宅政策本部「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック(戸建住宅編)」(令和2年3月改定) https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/ansingaido_5 (確認 2026-10-25)
- ※S09 国土交通省「不動産情報ライブラリ」 https://www.reinfolib.mlit.go.jp/ (確認 2026-10-25)
- ※S10 国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラム 参考資料集」(令和6年6月) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750045.pdf (確認 2026-10-25)
- ※S11 東京都「東京都空き家ワンストップ相談窓口」チラシ(2025年8月掲載) https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/2025-08-28-082435-624 (確認 2026-10-25)
- ※S14 国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」(2018年7月19日) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180719_1.html (確認 2026-10-25)
- ※S15 国民生活センター 見守り新鮮情報 第525号「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」(2025年10月30日) https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen525.html (確認 2026-10-25)
- ※S16 国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル」(2022年11月2日) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221102_1.html (確認 2026-10-25)
- ※S18 国民生活センター 見守り新鮮情報 第466号「貴金属の買い取りが目的!?強引な訪問購入に注意」(2023年11月7日) https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen466.html (確認 2026-10-25)
- ※S19 消費者庁「特定商取引法ガイド」訪問購入 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorpurchases/ (確認 2026-10-25)
- ※S27 e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法 第46条 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176 (確認 2026-10-25)
- ※S26 消費者庁「特定商取引に関する法律施行令第34条で規定する物品の具体例」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20230421la02_10.pdf (確認 2026-10-25)
- 架空の例:手帖で作った計算です(相場ではありません)