「荷物はそのままで大丈夫」と言われたら、何を確かめる? 範囲・費用・期限・書く場所

更新:2026年10月27日

結論

確かめるのは「どこまでの物か」「処分の費用は誰が持つか」「いつまでに」「契約書のどこに書くか」の4つです。 「そのまま」の一言だけでは、この4つは決まっていません。置いていく物・持ち出す物を表にして、契約書の特約条項の欄か別紙に、文字で書いてもらいましょう(手帖のおすすめ)。 手帖が読んだ売買契約書のひな形と付帯設備表には、家財を書く決まった欄がありませんでした(下の「契約書のどこに書かれるか」)。

相続放棄を少しでも考えているなら、家財の処分や売却の前に止まってください(理由は「荷物が残った実家は売れる?」の「相談」の節に)。

この記事が合う人

  • 不動産会社や買取会社に「荷物はそのままで大丈夫」「現況のままで」と言われた人
  • 買取の提示を受けて、これから契約書の案を見る人
  • 遠方に住んでいて、引渡しの日までに何度も帰れない人

合わない人(別の記事・窓口へ)

この記事でいう「そのまま」は、家と土地を売るとき(不動産会社が自分で買う「買取」、または仲介)に、家の中の物を片付けずに引き渡してよい、と言われることです。

「そのまま」は、家財の話か、設備の話かを先に聞く

三田市(2025年2月25日更新)と橋本市(2026年4月1日更新)の空き家の案内は、家に残った家具・家電・仏壇など(残置物)を売るときの条件の例として、ほぼ同じ文面で次の3つを並べています。(※S242・S243)

  1. 契約後・引渡しまでに、売主の負担で処分する(買主が引き取りを望む物だけ残す)
  2. 現況のままで引き渡し、残置物は買主の負担で処分する
  3. 不要な残置物を買主の負担で処分するなら、金額の交渉に応じる

同じ「荷物を残した家を売る」でも、処分の費用を持つのが売主か買主かで、中身が逆になります。「そのまま」と言われたら、上のどれに近い話なのかを聞きます(手帖のおすすめ)。

一方で、エアコンや給湯器などの設備について、「不具合があっても、そのまま引き渡す」形の約束もあります。「残置物」という言葉が、設備の意味で使われる例もあります。

  • 全宅連の売買契約書のひな形(仲介用)には、付帯設備表で「有」とした設備を引き渡し、その故障や不具合について売主は修補・損害賠償その他の責任を負わない、という条(第10条)があります(※S230)。
  • 全日本不動産協会の会報に載った不動産コンサルタントの連載(2024年5月14日)は、築年数の経った家で、設備を「残置物」として告げて品質を保証しないことをはっきりさせる一覧表を、付帯設備表の代わりに使う考え方を紹介しています。業界の標準の書式ではなく、1人の実務家の提案です(※S247)。

そこでまず、「家の中の物(家財)を置いていってよい、という話ですか。それとも、設備の不具合を問わない、という話ですか」と聞き返します(手帖のおすすめ)。

契約書のどこに書かれるか:公開されている書式の読み比べ

家財(家具・衣類・食器・仏壇など)を書く欄がどこにあるかを、手帖が公開されている書式で読み比べました。

書式書く人何を書くか家財を書く欄
売買契約書(全宅連のひな形・一般仲介用)不動産会社が用意し、売主・買主が署名代金・引渡しの期日・付帯設備の引渡し・契約不適合責任など家財を扱う独立した条は無い。どの条にも当たらない約束は特約条項の欄(第24条)に書く、と注記がある(※S230)
付帯設備表(全宅連・2021年9月改訂)売主給湯・キッチン・照明・カーテン・物置・庭木庭石・車庫などの有無と、分かっている故障・不具合無い。収納の欄には原則として造付けでない家具は含まれず、不要になったたんすや金庫などは売主の責任で処分するよう、記入の留意点に書かれている(※S231)
設備・工作物のチェックリスト(東京都の既存住宅の売買ガイドブック)売主・買主が確かめるのに使う(売主が設備表の代わりに使うこともある)。契約書類に付けるのが決まりの書式ではない引き渡す設備・工作物とその状態無い(設備・工作物の表)。いまあっても売るときに撤去する予定の物は、備考欄に「撤去予定」と書く(※S237)
物件状況確認書(告知書)売主(売主の責任の下で作ったと明らかにして渡す)売主しか知らない土地・建物の履歴や状態手帖は書式の中身を確かめていない(※S230・S236)
37条書面(宅地建物取引業法で不動産会社が渡す書面)不動産会社代金・引渡しの時期・代金以外のお金のやり取りの定め・契約不適合責任の定めなど法律で決まった記載事項に、家財の項目は無い(※S234)。当事者の双方が確認した付帯設備表の内容も、書く必要がある事項には当たらない(売買契約書を37条書面とする場合に、書くことは妨げない)と国土交通省のQ&Aにある(※S233)

東京都のガイドブックは、物件状況等報告書と設備表について、業界団体ごとに標準を定めている(物件状況等報告書は名前も違うことがある)、としています(※S237)。上の表は、手帖が読めた書式の範囲の話です。

読み比べて分かったこと(手帖の読み方)

  • 手帖が読んだ書式には、家財を書く決まった欄が見当たりませんでした。全宅連のひな形のままなら、「荷物はそのままで」という約束は、特約条項の欄か別紙に書かれない限り、書面の上には出てきません。
  • 「付帯設備表に書いておきます」と言われても、全宅連の付帯設備表は設備の表です。家財をどこに書くかは、別に聞きます。
  • 全宅連のひな形は仲介用です。不動産会社が自分で買う「買取」用の、業界団体が公開した標準の書式は、手帖が調べた範囲(全宅連・全日本不動産協会・国土交通省の公開ページ)では見つかりませんでした。買取の契約書がどんな形かは、契約の前に案を見せてもらって確かめます。

付帯設備表で気をつける2つ

  • 全宅連の付帯設備表の「有・無」は、契約のときではなく引渡しのときの状態で書きます。契約のときにあっても、引渡しまでに売主が撤去する設備は「無」にします(※S231)。東京都のチェックリストでは、撤去する予定の物は「撤去予定」と備考欄に書きます(※S237)。同じ「撤去する」でも書き方が書式で違うので、どの欄にどう書いたかを聞いておきましょう(手帖のおすすめ)。
  • 全宅連の記入の留意点では、庭木は植えてある物のほか、鉢植えなどで撤去しない物も書くことになっています(※S231)。庭や物置まわりの物も、表から落とさないようにします。

「残す物の一覧」に足す列と行

残す物・撤去する物・撤去する人と期限・費用の負担を書く基本の一覧は、「荷物が残った実家は売れる?」の「残す物の一覧」にあります。「そのまま」と言われたあとは、その一覧に「未確認」「誰の物か」「書いてある書類」の列を足し、「費用の負担」の列を細かくします(手帖のおすすめ)。

足す列書くこと足す理由
未確認(置いていく/持ち出すに足す)見ていない場所・開けていない箱は「未確認」移動が難しい家具で見られない所は、建物状況調査でも「調査できなかった」と記載される、と国土交通省のQ&Aにある(※S233)
誰の物か親・家族・他人(借り物・預かり物)・分からない国土交通省・法務省の賃貸用のモデル契約条項(借りた人が亡くなったあとの場面)は、部屋の中の他人の物やお金を、ほかの家財と別に扱っている(※S238)
費用の負担(細かくする)売主・買主に加えて、代金から引くか・別に払うか、と額2022年度の国のアンケート(この問いに答えた不動産会社428社)で、仲介の報酬とは別に費用を受け取った会社が挙げた費目の中に、「残置物撤去費用」があった(※S10)
書いてある書類特約・別紙・付帯設備表・口頭だけ家財を書く決まった欄が、読み比べた書式には見当たらないため(上の表)

行は、次の物を落としていないかを見ます。

場所確かめる物確かめる理由
各部屋たんす・金庫など、造付けでない家具全宅連の付帯設備表の収納の欄には原則として含まれない(※S231)
各部屋照明・カーテン・エアコン付帯設備表で有無を書く物。撤去する物の書き方は書式で違う(※S231・S237)
台所・洗面など冷蔵庫・洗濯機・テレビ・エアコン家電リサイクル法で処理する4品目(※S240・S242)
仏間仏壇・位牌・神棚三田市・橋本市の案内は、仏壇・位牌は寺院や葬儀業者、神棚は神社への相談を勧めている(※S242・S243)。2022年度の国のアンケートでも、不動産会社の回答に、仏壇や神棚の処分は気を遣い費用もかかる、とある(※S10)
押入れ・引き出し現金・通帳・権利証・写真・手紙2022年度の国のアンケートで、権利証や公共料金などを探すのが大変だった、という回答と、お金になりそうな物を分けて売主に返した、という別の回答がある(※S10)。司法書士会の資料は、残置物を撤去する流れのはじめに、現金・証書・写真・手紙などを選び出す段を置いている(※S13)
物置・車庫・庭物置・庭木・鉢植え・庭石全宅連の付帯設備表に物置・庭木・庭石の行があり、庭木・庭石の行には撤去しない鉢植えも含めて書く(※S231)
物置・車庫石油類・プロパンガスボンベ・農薬・塗料・消火器・タイヤ・バッテリー横浜市は、市で収集しない品目に挙げ、販売店などへと案内している(品目と窓口は市町村で違う)(※S245)
車・バイク名義や手続き手帖は今回、公的資料で確かめていない。別に確かめる

書き込んだ例(架空)

架空の例(手帖の計算例)

人も家も物も、すべて架空です。「そのまま」と言われたあと、足した列を埋めた途中の状態です。

場所物置いていく/持ち出す/未確認誰の物か処分の費用いつまで書いてある書類
居間和だんす置いていく親買主引渡しの日口頭だけ
居間エアコン置いていく親――付帯設備表(有)
仏間仏壇未確認(家族で相談中)親未定未定口頭だけ
2階の押入れ段ボール箱未確認(開けていない)不明未定未定なし
物置灯油の缶・塗料置いていく親未定未定口頭だけ
車庫近所の人から預かった自転車持ち出す他人―引渡しの前なし

この例で、「未確認」「未定」「口頭だけ」「なし」が残っている行が、契約の前に詰める行です。和だんすとエアコンは「置いていく」で同じに見えますが、エアコンは付帯設備表に載り、和だんすはどの書類にも載っていません。

言われ方ごとに、聞き返すこと

言われたこと聞き返すこと(手帖のおすすめ)
「荷物はそのままで大丈夫です」家財の話ですか、設備の話ですか。どの場所の、どの物までですか(物置・庭・車庫も入りますか)
「現況のままで引き渡してください」残った物はそちらが処分する、という意味ですか。それとも、設備の不具合を問わない、という意味ですか
「残置物はこちらで処分します」処分の費用は誰が持ちますか。代金から引きますか、別に払いますか。その額と時期は、書面のどこに書きますか
「いらない物は置いていってください」置いていく物の表を、契約書の特約か別紙にしてもらえますか
「仏壇もそのままで大丈夫です」仏壇・位牌・神棚は、どう扱いますか。供養などの手配は、誰がしますか
「中を見なくても大丈夫です」見ていない場所から、引渡しのあとに物が見つかったら、どう扱いますか
「引渡しの日までに、出せる物だけ出してください」引渡しの日を過ぎて残った物は、どう扱う約束ですか
「付帯設備表に書いておきます」全宅連の付帯設備表は設備の表だと思いますが、家財はどこに書きますか

不動産会社・買取会社に聞くこと

  • 「そのまま」は、家財の話ですか、設備の話ですか
  • 置いていってよい物は、どの場所の、どの物までですか(物置・庭・車庫・仏壇も入りますか)
  • 置いていく物の処分の費用は、誰が持ちますか。代金から引くなら、いくらで、どこに書きますか
  • 置いていく物の表を、契約書の特約か別紙にしてもらえますか
  • 見ていない場所から、引渡しのあとに物が見つかったら、どう扱いますか
  • 置いていく物は、誰が、どの許可を持つ業者に頼んで処分しますか
  • 買取の契約書の案を、契約の日より前に見せてもらえますか

印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。

提示額に撤去の費用をどう見込んだかを聞く質問は、「仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?」の質問カードにあります。この記事では、その費用をどこに書くかを聞きます。

写真と一覧を、両方が持つ

売買の「そのまま」そのものについて、家財の確かめ方を書いた公的な資料は、手帖が調べた範囲では見つかりませんでした。場面は違いますが、国の資料には次の考え方があります。

  • 国土交通省の空き家管理のガイドライン(2024年6月。不動産会社が空き家の管理を受けるときの指針で、売買の指針ではありません)は、契約の前に家の中を双方で確かめ、貴重品・荷物・家財の状況を書面などで確認しておくとよいとし、家財の写真を双方で確認・保存することも有効だとしています(※S239)。
  • 国土交通省・法務省の残置物のモデル契約条項(2021年6月策定。賃貸住宅を借りた人が亡くなったあとの場面のひな形で、売買のものではありません)は、捨ててはいけない物を「指定残置物」として一覧にし、金庫や容器ごとに、中の物を廃棄しないと指定する方法もある、と説明しています(※S238)。

この2つを参考に、売買の「そのまま」でも、上の表と部屋ごとの写真を売主と相手の両方が持ち、捨ててほしくない物は先に運び出すか、箱ごと「持ち出す」と表に書いておくのが手帖のおすすめです。仕分けの印の付け方は「実家の片付けで「残す・処分・保留」を家族に伝えるには?」にまとめています。

置いていく物も、ごみとしての決まりがある

  • 環境省のリーフレット(2018年6月。解体・リフォームの工事を頼む人向け)は、工事の際に残された不用家具・家電など(残置物)は、工事の前に、その持ち主である建物の所有者や占有者が廃棄物処理法に従って処理するもので、家庭の残置物は一般廃棄物として市町村に相談し、市町村の一般廃棄物処理業の許可が無い業者は処理できない(産業廃棄物処理業・解体工事業・古物商の許可では処理できない)と案内しています(※S240)。
  • 環境省の調査(全国1741市区町村がすべて回答。2018年度・2019年8月の報告書。解体のときの残置物の調査)では、残置物の相談があった419市区町村のうち158(37.7%)で、「処理責任の所在」が相談の内容でした(※S241)。
  • 家を買った会社があとで家財を出すとき、それがどの種類のごみになるかを説明した公的な資料は、手帖が調べた範囲では見つかりませんでした。手帖では判断しません。

「そのまま」で引き取ってもらう場合も、置いていく物を誰が、どの許可のある業者に頼んで処分するのかを聞いておきましょう(手帖のおすすめ)。許可の確かめ方は「片付け業者の資格・許可は何を見ればいい?」にまとめています。

法律の決まり(詳しく)
  • 37条書面:不動産会社は、自分が当事者として契約したときはその相手に、仲介したときは売主・買主のそれぞれに、契約の内容を書いた書面を渡します。記載事項には、引渡しの時期、代金以外のお金のやり取りの定めがあるときはその額・時期・目的、契約不適合責任の定めなどがあり、家財の項目はありません(宅地建物取引業法 第37条第1項)(※S234)。撤去や処分のお金が「代金以外のお金」に当たるかは、この記事では判断しません。
  • 重要事項の説明:条文では、宅地建物を「取得し、又は借りようとしている」人に向けて、契約が成り立つまでに行う説明です(宅地建物取引業法 第35条第1項)(※S102)。家を売る側は、説明を待たずに、置いていく物の扱いを自分から聞いておくのが手帖のおすすめです。
  • 勧誘のときの説明:不動産会社は、契約の勧誘などのときに、取引の条件など相手の判断に重要な影響を及ぼす事項について、わざと事実を告げない・事実でないことを告げることを禁じられています(宅地建物取引業法 第47条第1号)(※S103)。口頭の「そのまま」がこれに当たるかは、この記事では判断しません。書面に残すのは、あとで「言った・言わない」にならないためです(手帖のおすすめ)。特約や別紙には書かないと言われたら、契約を結ぶ前に、消費者ホットライン「188」や弁護士などの専門家に相談してください。
  • 設備の故障と、知っていて告げなかったこと:責任を負わないという特約をしても、売主が知っていて告げなかった事実については責任を免れません(民法 第572条)(※S02)。全宅連の売主向けの注意も、知っていながら告げなかった故障・不具合は、責任を負わない取決めをしていても責任を問われることがある、としています(※S231)。
  • 付いている物と、置いてある物:民法には、物の持ち主が、その物をふだん使うために自分の別の物を付けたとき、付けた物(従物)は元の物(主物)の処分に従う(第87条)、不動産に付いて一体になった物は不動産の所有者のものになる(他人が権原によって付けた物の権利は妨げない・第242条)、という定めがあります(※S235)。どの物がどちらに当たるかは個別の判断になるので、手帖では当てはめません。表で1つずつ「置いていく/持ち出す」を決めておくのが手帖のおすすめです。

この記事で書かないこと

次に確かめる先

制度・手続きを確かめる(公的な窓口)

  • 実家のある市区町村のごみの担当課:市が集めない品目の出し方、ごみを運べる許可業者(※S242・S245)
  • 実家のある市区町村の空き家の窓口:家財は基本的に所有者が処分するが物件によって違うので、仲介業者や市役所に確かめるよう案内している市もあります(村上市の空き家バンクの、空き家を買いたい人向けのよくある質問の例)(※S244)
  • 消費者ホットライン「188」:自宅の売却の契約で不安なとき、置いていく物の約束を特約や別紙に書かないと言われたとき(※S104)
  • 不動産会社の免許を出した役所(免許行政庁):強引な勧誘など、宅地建物取引業法で禁じられた勧誘で困ったとき(※S105)

出典と確認日