仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?

更新:2026年10月25日

結論

仲介の査定額と買取の提示額は、性質が違う数字です。 査定額は売主が売り出し価格を決めるための材料で、最終的な値段は買主との合意で決まります(※S98)。買取の提示額は、会社が自分で買主になる値段です(※S102・S105)。 高いほうの数字を選ぶ前に、確実さ・手数料・売れるまでの期間と維持費・契約で守られる決まりをそろえて並べましょう。

この記事が合う人

  • 実家の売却で、仲介の査定額と買取の提示額の両方が手元にある人
  • 仲介と買取のどちらにするか、決める物差しが欲しい人
  • 安い空き家で、売れるまでの維持費や手数料の決まりが気になる人

合わない人(別の記事・窓口へ)

  • 荷物が残ったままで売れるかが気になる人(「荷物が残った実家は売れる?」の記事へ)
  • 名義や相続人がまだ決まっていない人(先に名義と相続人の確認が必要です。相続の手続きは弁護士・司法書士などの専門家へ)

4つの「価格」は、決める人と性質が違う

価格誰が出す・決める性質
査定額(仲介)不動産会社が意見として出す売主が売り出し価格を決めるための材料(※S98)
売出価格売主が決める査定額などを踏まえて、売主が決めて売り出す値段(※S98)
成約価格売主と買主の合意合意して初めて決まる(※S98・S08)
買取の提示額買う会社が出す会社が自分で買主になる値段(※S102・S105)
  • 不動産流通推進センターの価格査定マニュアルでは、査定額は3か月程度で買い手が付くことを目安に出すとしています。(※S98・S99)
  • 不動産会社は、媒介契約で売り出す価格について意見を言うときは、根拠を示す決まりがあります(宅地建物取引業法 第34条の2第2項)。(※S06)

査定額は「その値段で売れる」と約束した数字ではない、と手帖では考えています。だから、査定額と買取の提示額を、そのまま大小で比べることはできません。 査定額を近所の成約価格と見比べる手順は、「荷物が残った実家は売れる?」にまとめています。

仲介と買取は、取引の形が違う

  • 仲介:不動産会社が、売主と買主の間に立って、契約の成立に向けてあっせんします(※S95)。
  • 直接の買取:不動産会社が、自分で契約の当事者(買主)になります(※S102・S105)。
  • 仲介会社を通して、買取の会社に売る:仲介会社が間に入る形なので、成約すればその仲介会社への手数料がかかる取引の形です(※S95・S27)。手元の提示額がどちらの形かを、まず確かめましょう。

同じ物差しで並べる表(手帖のおすすめ)

物差し仲介直接の買取
値段の決まり方売り出して、買主との交渉で決まる。成約するまで決まらない(※S98)提示額に合意すれば、それが契約の代金になる
不動産会社への手数料上限があり、上限の範囲内で協議して決める(※S27・S92)。800万円以下の空き家などは、2024年7月1日から特例で、上限を33万円(税込)まで引き上げられるようになりました。通常の計算より高くなることがあるので、媒介契約のときに額を合意しておきます(※S94)会社が自分で買う取引で、仲介ではない。仲介手数料の決まりの対象になる取引の形ではない、と手帖では読んでいます。ほかの名目の費用が無いかは契約書で確かめる
売れるまでの期間と維持費買主が見つかるまで分からない。その間も固定資産税などの維持費がかかる引き渡しの日を契約で決める
引き渡したあとの責任(契約不適合責任)特約で決める。責任を負わない特約を結んでも、知っていて告げなかったことは免れない(※S02)同じく特約で決める(※S02)。契約書を確かめる
クーリング・オフ宅地建物取引業法のクーリング・オフは会社が売主のときの決まりで、売主として仲介で売る場合には当てはまらない(※S102)自宅を不動産会社に売る場合、クーリング・オフはできない、と国民生活センターと国土交通省が注意しています(※S104・S105)

架空の例:安い実家で、幅と維持費まで並べる

架空の例(手帖の計算例)

数字はすべて架空です(相場ではありません)。税金・登記の費用・荷物の撤去費は入れていません。

仲介(査定額750万円)直接の買取(提示額550万円)
売れる値段未確定。例えば650万〜750万円の幅で考える550万円(合意すれば確定)
仲介手数料特例の上限いっぱいの33万円で見る(通常の計算なら約28.1万〜31.4万円)なし(直接の買取の場合)
売れるまで3〜9か月かかると仮定引き渡しまで1か月と仮定
維持費(月2万円と仮定)6万〜18万円2万円
手元に残る額約599万〜711万円(売れた場合)548万円

仲介の幅は、安く・遅く売れた場合(650万円−33万円−18万円)と、高く・早く売れた場合(750万円−33万円−6万円)です。 この例では、仲介のほうが多く残る見込みですが、売れなかった場合の維持費や手間は、この表に入っていません。急ぐ理由と、待てる期間で、どちらが合うかが変わります。

画面で並べて、会社ごとの「聞くこと」まで出すなら:見積もり比べ表(入力は端末の中だけで扱います)

買取は、どれくらい安くなる?

仲介と比べて買取の提示額がどれくらい低くなるかを示す公的な統計は、手帖では見つけられませんでした。 国土交通省の資料は、「買取再販」(不動産会社が既存の住宅を買い取り、手直しをして質を高めてから売る事業)は、流通しにくい築年数の古い住宅を多く扱う傾向がある、と説明しています(税制改正の要望の資料)。(※S106) 提示額がどう出されたかは、会社に聞いてみましょう。手直しの費用・荷物の撤去の費用・会社の経費などをどう見込んだかが分かると、仲介の査定額と並べたときの差の理由が見えてきます。

仲介を選ぶなら:媒介契約の種類を確かめる

どの種類にするかは売主が選べるもので、不動産会社は違いを十分に説明して、売主の意思を確かめて契約することとされています。(※S92)

媒介契約の3つの種類の違い(詳しく)
専任媒介(業者が探した相手とだけ契約する特約つき)専任媒介一般媒介
ほかの会社にも頼めるか頼めない頼めない頼める(ほかの会社を明かすのが原則。特約で明かさない形もある)
自分で見つけた相手と契約できないできるできる
有効期間3か月まで3か月まで法律の制限なし(標準の約款では3か月以内)
物件情報の登録(レインズ)契約の翌日から5日以内(休業日を除く)契約の翌日から7日以内(休業日を除く)義務なし(登録はできる)
業務の報告1週間に1回以上2週間に1回以上法律の義務なし(求めることはできる)
購入の申込みがあったときの報告遅滞なく遅滞なく遅滞なく

(※S90・S91・S92・S96。表の1列目は、いわゆる「専属専任媒介」です)

専任媒介の物件は、2016年からレインズの「ステータス管理機能」で、売主が取引の状況(公開中・書面による購入申込みあり・売主都合で一時紹介停止中)を確かめられるようになっています。2025年1月1日からは、不動産会社にこの状況の登録が義務になり、1月4日からは登録証明書に売主専用画面への2次元コードが載るようになりました。(※S93・S96)

直接の買取を選ぶなら:守ってくれる決まりの違いを知っておく

宅地建物取引業法のクーリング・オフや、違約金・手付の上限などは、不動産会社が売主のときの決まりです。実家を不動産会社に買い取ってもらう場合は会社が買主なので、これらは当てはまりません。(※S07・S102) 国土交通省は、強引な勧誘など宅地建物取引業法で禁じられた勧誘があったときは、日時・会社名・免許番号・担当者・言われたことを記録し、免許を出した役所(免許行政庁)に相談するよう案内しています。(※S105)

当てはまらない決まりと、「売れなければ買い取ります」の特約(詳しく)
  • 不動産会社が売主のときの決まり:クーリング・オフ(第37条の2)、違約金・損害賠償の予定の上限(第38条)、手付の上限(第39条)、契約不適合責任の特約の制限(第40条)。(※S07・S102)
  • 国土交通省の通達は、一定の期間に売れなければ不動産会社が媒介価額を下回る価額で買い取るという特約について、売主に売る義務を負わせない形なら差し支えないとしています。(※S92)買い取る価格がいくらか、売主に売る義務があるかを、契約の前に確かめましょう。

不動産会社に聞くこと

仲介の会社に聞くこと

  • 売り出し価格は、いくらを勧めますか。その理由は
  • 仲介手数料はいくらになりますか。800万円以下の空き家の特例を使う場合、通常の計算と比べていくらになりますか
  • 媒介契約の種類ごとに、レインズに登録する日と、報告の頻度・方法を教えてください
  • 売れるまで、どのくらいかかりそうですか。その見込みの理由は

印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。

買取の会社に聞くこと

  • 御社が直接買う形ですか。仲介会社を通す形ですか(手数料はかかりますか)
  • この提示額は、どう出しましたか(手直し・荷物の撤去・経費をどう見込みましたか)
  • 提示額は、契約までに変わることがありますか
  • 契約書に、引き渡したあとの責任(契約不適合責任)を負わない特約は入りますか
  • 契約のあとでやめるときの手付・違約金は、いくらですか

印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。

次に確かめる先

制度・手続きを確かめる(公的な窓口)

  • 免許行政庁(国土交通省の「宅建業者企業情報」で調べられる):不動産会社の勧誘で困ったとき(※S105)
  • 消費者ホットライン「188」:自宅の売却の契約で不安なとき(※S104)

出典と確認日