相続登記が済んでいない実家は売れる? 売る前に名義を移す順番と期限

更新:2026年10月25日

結論

名義が亡くなった親のままの実家は、そのままでは売れません。 法務省は、相続した不動産を売却する場合には相続登記(相続人への名義の変更)が必要だと案内しています。(※S173) 手帖のおすすめは、売る相談(査定)は登記の前から始め、遅くとも決済の日(買主へ名義を移す日)までに相続人の名義にしておく段取りです。 売買契約の前と決済までのどちらで登記を済ませるかは、不動産会社や司法書士と早めに決めましょう。

この記事が合う人

  • 親が亡くなり、実家の名義が親のままになっている人
  • 実家を売りたいが、相続の手続きと売る手続きの順番が分からない人
  • 相続登記の期限と、間に合わないときの方法を知りたい人

合わない人(別の記事・窓口へ)

  • 相続人どうしで分け方が決まらず、もめている人(家庭裁判所の調停や弁護士への相談が先です)
  • 売るかどうかを決める前に、荷物の片付けから考えたい人(「荷物が残った実家は売れる?」の記事へ)

名義が親のままだと、なぜ売れない?

法務省は、相続人申告登記(下で説明する簡単な申出)は権利関係を示すものではないので、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には相続登記をする必要がある、と説明しています。(※S173・S174)

登記の決まりから見た理由(手帖の読み取り)

不動産登記法では、名義を移す登記は、登記で名義を得る人と、名義を失う人(登記簿の名義人)が一緒に申請するのが原則です(第60条・第2条第13号)。相続による名義の変更だけは、相続人が単独で申請できます(第63条第2項)。(※S170) ここからの手帖の読み取りですが、買主への名義の変更では、売る側は「登記簿の名義人」でなければならず、亡くなった親の名義のままでは相続人が売る側として申請できません。だから先に相続人の名義にする、という順番になります。

相続登記の期限は?

相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。(※S172・S173)

場面期限出典
2024年4月1日以後に、相続で取得したことを知った自分のために相続が始まったことを知り、かつその不動産を取得したことを知った日から3年以内※S123・S172
2024年4月1日より前に、相続で取得したことを知っていた(まだ登記していない)2027年3月31日まで(2024年4月1日から3年)※S171・S172・S173
法定相続分で登記した後に、遺産分割で法定相続分より多く取得した遺産分割の日から3年以内※S170・S172
  • 期限の起点は「親が亡くなった日」ではなく、「自分が相続人になったことと、その不動産を取得したことを知った日」です。(※S123)
  • 正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象です。ただし、いきなり科されるのではなく、登記官からの催告に応じない場合に裁判所へ通知される流れで、正当な理由があると認められれば通知されません。(※S170・S173)
  • 正当な理由の例として法務省は、相続人がとても多く戸籍集めに時間がかかる、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている、義務がある人が重い病気、DV などで避難している、経済的に苦しく費用を負担できない、を挙げています(これ以外も個別に判断)。(※S173)

売るまでの順番(手帖のおすすめの図)

段すること主な書類窓口
1遺言書があるか確かめる法務局で保管された遺言は遺言書情報証明書、それ以外の自筆の遺言は家庭裁判所の検認が要る(※S184)。法務局に保管があるかは遺言書保管事実証明書で、公正証書遺言(1989年以降に作られたもの)の有無は公証役場の検索で確かめられる(※S35・S36)法務局・公証役場・家庭裁判所
2相続人を確かめる亡くなった人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍、相続人の戸籍(※S184)本籍地の市区町村(下の「近道」も)
3遺産の分け方を決める遺産分割協議書と、押した印鑑の印鑑証明書(※S184)相続人どうし(まとまらなければ家庭裁判所の調停 ※S41)
4相続登記をする申請書・上の書類・その年度の固定資産課税明細書・新しく名義人になる人の住民票。登記簿上の住所が本籍と違うときは住民票の除票か戸籍の附票も(※S184)実家の所在地を管轄する法務局(※S183)
5売買契約―不動産会社
6決済・引渡し(買主へ名義を移す)―不動産会社・司法書士
  • 建物が登記されていない(表題登記が無い)ときは、建物を取得した人は取得の日から1か月以内に表題登記を申請する決まりがあります(不動産登記法 第47条)。京都地方法務局は、登記されていない建物を相続した人の相談先に土地家屋調査士を案内しています。(※S163・S164)
  • 国土交通省の資料では、売却は「物件調査→価格査定→媒介契約→相手方の探索→交渉→売買契約→決済・引渡し」と進みます。(※S95)
  • 手帖のおすすめは、段1〜4と並行して、不動産会社への相談(査定)を始めておくことです。売れる見込みや時期が分かると、分け方の話し合い(段3)も進めやすくなるからです。登記の前に査定を受けられるかは、相談する会社に確かめてください。
  • 手帖が読んだ法務省・法務局の案内には、相続登記を売買契約の前と決済の日までのどちらで済ませるかは書かれていませんでした。不動産会社と司法書士に、どちらの段取りにするかを聞いておきましょう(下の「聞くこと」)。
  • 相続人が複数いて「売って代金を分ける」ときに、誰の名義で登記して売るかは、司法書士に相談しましょう(手帖のおすすめ)。

「相続人申告登記」では売れない

期限に間に合わないときのために、「相続人申告登記」という簡単な申出があります。ただし、これだけでは売れません。(※S173・S174・S175)

相続人申告登記相続登記
すること「相続が始まった・自分は相続人」と登記官に申し出る(※S170・S174)不動産の名義を相続人に移す
期限の義務期限内に申し出た本人だけ、義務を果たしたとみなされる。ただし申出より前の遺産分割で取得した分は除く(※S170・S173)義務そのもの
遺産分割の後分割で取得したら、分割の日から3年以内に相続登記が要る(※S170・S172)分割の結果どおりに登記すれば足りる
売る・抵当権を付けるできない(別に相続登記が要る)(※S173・S174)売る前提が整う
戸籍申出人が相続人の一人と分かる範囲(※S175)亡くなった人の出生から死亡まで+相続人(※S184)
登録免許税かからない(※S174・S175)不動産の価額の0.4%(下の式。免税措置あり)

法務省の案内では、すぐに遺産分割や相続登記をするのが難しい場合に使うことが想定されています。(※S175)

書類を集める近道

  • 戸籍の広域交付:2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍・除籍の証明書をまとめて請求できます。ただし、本人が窓口に行く必要があり(郵送や代理人は不可)、請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍で、兄弟姉妹の戸籍は挙げられていません。コンピュータ化されていない一部の戸籍は対象外です。(※S187)
  • 法定相続情報証明制度:集めた戸籍の束と「法定相続情報一覧図」を法務局に出すと、登記官が確かめた一覧図の写しを無料で交付してくれます(2017年5月から)。銀行の預金の手続など、出す先が複数あるときに戸籍の束の代わりに使えます(使えるかは出す先に確かめる)。2024年4月1日からは、相続登記の申請書に法定相続情報番号を書けば、写しの添付も省けます。(※S176)
    • 申し出る先は、亡くなった人の死亡時の本籍地・最後の住所地、申し出る人の住所地、亡くなった人名義の不動産の所在地のどれかを管轄する法務局で、郵送でも申し出られます。(※S177)
    • 戸籍を集める手間そのものをなくす制度ではありません。集めた後の出し直しを減らす制度です(手帖の読み取り)。

費用の式(登録免許税と戸籍)

登録免許税(相続による名義の変更)

  • 式:(固定資産課税台帳の価格の合計、1,000円未満切り捨て)× 0.4%、100円未満切り捨て。計算した税額が1,000円未満なら1,000円です。(※S178・S181・S183)
  • 使う価格は、固定資産課税明細書の「価格」または「評価額」と書かれた額で、「固定資産税課税標準額」ではありません。(※S183)

架空の例(手帖の計算例)

数字はすべて架空です。

  • 土地の価格 3,456,789円 + 建物の価格 1,234,567円 = 4,691,356円
  • 1,000円未満を切り捨てて 4,691,000円
  • 4,691,000円 × 0.4% = 18,764円 → 100円未満を切り捨てて 18,700円
  • 免税措置:相続による名義の変更で、土地の価額が100万円以下なら、2027年3月31日までに受ける登記は登録免許税がかかりません(2026年10月時点の租税特別措置法第84条の2の2)。持分で取得した場合は、土地全体の価額に持分の割合をかけて判定します。申請書に免税の根拠の条文を書かないと受けられません。建物は対象に書かれていません。(※S179・S180)
  • 相続登記の義務の期限(2024年4月1日より前に知っていた人は2027年3月31日まで)と、免税措置の期限(2027年3月31日まで)は、別の法律の別の決まりです。(※S172・S179)
  • 法務局の古い冊子(2024年9月版)には免税措置の期限が「2025年3月31日まで」と書かれたものがあります。期限は法務局の免税措置のページ(2026年4月1日更新)で確かめてください。(※S180・S183)

売ったときの税の特例にも期限がある

  • 国税庁は、相続した空き家を売ったときの特例(一定の要件あり)について、相続の開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどを要件に挙げ、制度は2027年12月31日までの売却が対象と案内しています。当てはまるかは、税務署や税理士に確かめてください。(※S148)

戸籍の手数料

  • 全国の標準の額は、戸籍の謄本・証明書が1通450円、除籍の謄本・証明書が1通750円です。実際の額は市区町村の条例で決まります。(※S188)

どこに何を聞く?

聞きたいこと窓口
登記の申請書の書き方・添付書類法務局の登記手続案内(完全予約制・1回20分以内。遺産の分け方や売買契約の助言は対象外)(※S185)
相続登記の進め方・自分でできるか司法書士会の相続登記相談センター(無料で相談できる窓口)(※S186)
分け方がまとまらない家庭裁判所の遺産分割調停(※S41)・弁護士
売れる見込み・売る段取り不動産会社(査定の比べ方は「仲介の査定額と買取の提示額、そのまま比べていませんか?」へ)
建物が登記されていない土地家屋調査士(※S164)
売ったときの税の特例税務署・税理士(※S148)

不動産会社に聞くこと

  • 名義がまだ親のままですが、査定や売る相談はできますか
  • 相続登記は、売買契約の前に済ませる段取りですか、決済の日までですか
  • 相続人が複数います。売るときは、誰の名義にしておく必要がありますか
  • 登記を頼む司法書士は、自分で探す必要がありますか

印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。

司法書士に聞くこと

  • 相続登記の費用(報酬と登録免許税・実費)の内訳を、見積もりで教えてください
  • 集める戸籍の範囲と、こちらで集める物・頼める物を教えてください
  • 土地の価額が100万円以下の場合の免税措置は、この登記に当てはまりますか

印刷やスクリーンショットで、そのまま使えます。

次に確かめる先

制度・手続きを確かめる(公的な窓口)

  • 実家の所在地を管轄する法務局:登記の申請書の書き方・添付書類の相談(登記手続案内は予約制)(※S185)
  • 司法書士会の相続登記相談センター:相続登記の進め方の相談(※S186)
  • 家庭裁判所:遺言書の検認、遺産分割調停(※S184・S41)

出典と確認日